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今回は、オステオパシーの代表的な手技である頭蓋仙骨療法(頭蓋仙骨治療)について、ご紹介したいと思います。
目次
頭蓋仙骨療法(頭蓋仙骨治療)とは?
頭蓋は、頭の骨組みのことを指しています。頭蓋仙骨治療とは、主に頭蓋から仙骨(骨盤の中心にある骨)にかけての歪みや硬さを、手技により調整し解放する施術方法のことです。頭蓋(クレニオ)、仙骨(セイクラル)から冠して『クレニオセイクラル・セラピー』とも呼ばれています。
オステオパシーで診る頭蓋≪頭蓋を調整する目的≫
頭蓋の中には最重要な器官である脳が収まっているという点が、頭蓋を調整する目的の一つです。神経系・循環器系・筋膜系などの各システムは全身がつながりを持って機能し、コントロール中枢である脳によって統合されています。頭蓋の状態を考えないということは、体の全体性を診ていないということになると思います。
頭蓋の可動性と動き『28個ある頭蓋の骨はバラバラに動く』
生まれたての赤ちゃんや幼児の頭蓋は柔軟性に富み、縫合部(他の体の部位でいう関節)で可動性があることで知られています。一般的な医学では、頭蓋縫合は成長するに従って融合され、成人では頭蓋の縫合部は完全に固まり、可動性のない1つの骨であると今まで考えられてきました。しかし、科学的な進歩とともに頭蓋縫合の間には細胞の活動があり、28個ある頭蓋の骨は生涯を通して柔軟な可動性があることが解明され始めています。
頭蓋の可動性と動きはとても小さく繊細ですが、触診によっても感じ取ることができます。28個の骨にはそれぞれに動きの軸があるのでバラバラな動きをしますが、頭蓋全体では膨張・収縮(膨らんだり、縮んだり)を繰りかえすリズミカルな動きとして感知されます。
オステオパシーでは膨張と収縮を繰りかえすこのリズミカルな動きを『第一次呼吸メカニズム』と呼んでいます。「呼吸」という名前がついていますが、一般的な肺で行われている呼吸とは別のものです。頭蓋オステオパシーを考案したウィリアム・ガナー・サザーランド(後述)は、肺呼吸よりもこのメカニズムの方が重要だと考えていたために「第一次」と冠しています。
組織に柔軟性があり十分に活動していれば、膨張・収縮の動きは活発で大きく周期的で、反対に歪みや硬さがある部位ではこの動きは小さく不規則になり、時には止まっているように感じられます。この膨張・収縮の動きは、触知可能な人間の「生命力」そのものです。
頭蓋の動き(膨張と収縮)は脳の動きにシンクロしている
頭蓋の動き(膨張と収縮)は、その中にある脳の動きに同調しています。頭蓋がひとりでに動くわけではなく、元は脳の活動であって、頭蓋の動きはそれに合わせて動いています。正常な状態であれば頭蓋の動きと脳の動きはシンクロしていますが、頭蓋に硬さや歪みがあり膨張・収縮の動きが不均衡な部位では、脳の活動を抑え込み、その働きに影響を与えることになります。
『硬膜』頭蓋から仙骨にかけてのつながり
神経系の中心になる脳と脊髄は、硬い骨格(頭蓋・背骨・骨盤)の中に納められるように守られ、さらに3層の膜組織(軟膜・くも膜・硬膜)によって覆い包まれています。オステオパシーでは特に、この「硬膜(こうまく)」という膜組織にアプローチしていきます。
脳を包む「脳硬膜」、脊髄を包む「脊髄硬膜」と名前は変わりますが、つながりを持った一連の膜組織です。同じように頭蓋の内側、背骨の一部、仙骨(骨盤の中心にある骨)と尾てい骨にも硬膜は強く付着しています。この硬膜の連続によって、頭蓋-背骨-骨盤は一つのつながりをもったユニットとして考えられています。
例えば、骨盤が歪みは硬膜を介して頭蓋に影響を与え、反対に頭蓋の一部の硬さは骨盤にも影響を与えるように相互に作用します。硬膜を介した頭蓋と骨盤は、鶏と卵の関係であると言えると思います。
全身を診る必要性『土台が崩れていれば、、、』
例えば、足首に捻挫の既往があり硬さがある場合や膝が曲がっていて伸びきらない場合、その影響は股関節を介して骨盤を傾かせ、それに対応して背骨は歪み、頭蓋のバランスに影響を与えることになります。このような方に頭蓋と骨盤にだけ施術を加えても時間の経過によって元に戻ってしまう可能性もあり、効果は長続きしません。この場合、より効果的な施術を行うためには、原因になっている足首や膝関節へ施術を施す必要があります。
ひとえに頭蓋仙骨治療と言っても頭蓋も体の一部分であり、オステオパシーの原則にのっとり、身体全身を診ていくことが大切であると当院では考えています。
オステオパシーにおける脳脊髄液の流れ『血液、リンパに次ぐ第三の循環』
血液循環を重要視したオステオパシーの創始者アンドリュー・テーラー・スティルは、「血液の法則は絶対である」という言葉を残していますが、同時に「脳脊髄液は至高の液体である」と脳脊髄液の存在にも言及しています。
脳脊髄液とは、、、
脳脊髄液(CSF)は、脳の中にある空間(脳室とクモ膜下腔 ※クモ膜と軟膜の間)を満たす、無色透明で弱アルカリ性の液体です。1日で約500ml作られ循環しながら産生と吸収を繰り返し、約150mlの総量を維持しています。
脳脊髄液の役割
・脳圧(頭蓋骨の中の圧力)のコントロール
・神経系に栄養を与え、老廃物を吸収する
・脳を衝撃から保護する
オステオパシーで考える脳脊髄液の波動
脳脊髄液の産生と吸収の波動が全身に行き渡り、身体に一定のリズムを生じさせているとオステオパシーでは考えています。(上述の「第一次呼吸メカニズム」のことです)
脳脊髄液の循環に関して。一般的には、脳にある脈絡叢(みゃくらくそう)という場所で作られた脳脊髄液は、脳と脊髄の周りだけをを循環するとされていますが、まだ科学的には完全に解明されていません。実際の臨床解剖では、腕や脚の神経も一本一本が脳や脊髄と同じように硬膜で覆われていて、神経と硬膜の間には空間が空いていることを見ることが出来ます。脳脊髄液の波動を全身で触知できることから、神経と硬膜の間の空間に脳脊髄液が流れこんでいるのではないかと考えられています。(『解剖学の抜け穴 / 橋本一成著』には、脳脊髄液が末梢神経(腕や脚の神経)に循環する経路が記載されています。)
オステオパシーでは、脳脊髄液は全身の神経系に作用している液体であると考え、その循環を促すことを大切にしています。
極めて汚きも滞りなければ穢き(きたなき)とはあらじ
一切成就の祓
内外(うちと)の玉垣(たまがき)清浄(きよくきよし)と申す
循環していることの大切さを表した祝詞です。この祝詞に関してはこちらでも記事にしてますので、ご興味のある方はぜひ読んでみて下さい。
脳脊髄液のエネルギー的な側面
体に触れて感じることが出来る脳脊髄液の波動は、正常な状態あれば1分間に8回〜12回。これは海での潮の満ち引きと似ています。また脳脊髄液と海水、それから妊婦さんの羊水とは同じミネラルバランスだと言われ、脳脊髄液には神秘的な側面があります。
頭蓋オステオパシーの原理を作ったウィリアム・ガーナー・サザーランド(後述)は晩年、脳脊髄液を動かしている要素はどこか体の外(自然界)から来ているのではないかと考え「バイオダイナミクス」という施術法を創始し、その原動力となる力を「生命の息吹」「タイド」と呼びました。
オステオパシーの神髄であったこの考えは、科学的であることが重視される近代では影を潜めていますが、脳脊髄液の持つエネルギー的な側面を理解することはオステオパシーの一つの命題であると思っています。
サザーランドとアプレジャー
オステオパシーが発起する1800年代よりも以前から、洋の東西を問わずに頭蓋を調整する手技の記録が残っています。オステオパシーの世界では、頭蓋骨の調整方法の研究を始めたサザーランドと、それを一般に広めたアプレジャーの大きな功績があったと言われています。
ウィリアム・ガーナー・サザーランド (1873-1954)
オステオパシーの創始者A・Tスティルの教え子であったサザーランドは、頭蓋の一部である側頭骨という骨に興味を持ちました。側頭骨の形状が「魚のエラ」に似ていると感じたサザーランドは、「この骨は呼吸するように動いているのではないか?」と考えました。その事をA・Tスティルに伝えた時「Dig on(掘り下げろ)」と言われたサザーランドは、その後の30年間、研究を重ね、頭蓋オステオパシーとして様々な頭蓋の調整方法を考案し、発表していきました。
ジョン・E・アプレジャー
その他のオステオパシー手技と同じように、頭蓋領域のオステオパシーも医学的な知識を持つ医師にのみ伝えられていました。ジョン・E・アプレジャーは、特に自閉症など発達障害の子供に対して頭蓋骨調整の効果を感じ、医師でなくても行える頭蓋骨調整のプログラムを立案しました。アプレシャーが考案した頭蓋骨調整は「頭蓋仙骨療法(CST:クラニオ・セイクラル・セラピー)」として世界中に広く知られるようになります。
アプレジャー著「クレニオ・セイクラル・セラピー ナチュラル・ヒーリングの試金石」は頭蓋仙骨治療の可能性を感じる一冊です。特に自閉症や脳性麻痺などの発達障害に関する多くの施術効果が書かれています。頭蓋仙骨治療や自閉症に関心のある方にぜひ読んで頂きたいと思いますし、施術者の方にもお勧めいたします。アプレジャーが持っていた高い施術能力に、読む度に身が引きしまる思いになります。
動画の3:50~4:27でアプレジャーの施術場面が映っていますので、ご興味のある方はぜひ見てみて下さい。
※YouTubeの設定で字幕オン、自動翻訳を日本語にて動画をご覧ください。
頭蓋仙骨治療の効果
前述している通り頭蓋は体の一部であり、どのような症状に効果があると限定することは出来ませんが、一例としてサザーランドとアプレジャーの著書に効果があると記載されている症状を挙げています。
〇サザーランドの著書に書かれている頭蓋仙骨治療が有効である症状
骨格の疾患、特別な感覚器の疾患、急性・慢性の呼吸器疾患、目・耳・鼻・喉の異常、外傷による損傷、出生時の損傷、精神的な損傷
〇アプレジャーの著書に書かれている頭蓋仙骨療法が有効な疾患
自閉症、てんかん発作、多動症、慢性痛症候群、関節炎と関節痛、頭痛、神経痛、線維筋痛症、中枢神経系の変性疾患、脳卒中、学習障害、運動および言語障害、脳性麻痺、眼球運動障害、側頭下顎症候群、反射性交換神経性ジストロフィー
「クレニオ・セイクラル・セラピー ナチュラル・ヒーリングの試金石」より一部抜粋
※脳卒中に関しては、急性期は禁忌
優しく穏やかな施術
頭蓋を施術すると聞くと、少し怖いような感覚を持たれる方はいらっしゃると思いますが、オステオパシーの頭蓋仙骨治療は強い力ではなく、非常に繊細で優しい力で施術していきます。(頭蓋仙骨療法では、その圧力を「5gタッチ」と呼んでいます)
優しく施術ですので、生まれたばかりの赤ちゃんからご年配の方まで安心して施術を受けて頂く事ができます。ご自分のお体に必要を感じた方はぜひご連絡ください。
この記事を書いた施術者
関屋オステオパシー 代表
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
案内動画はこちら
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