健康観

パーキンソン病と便秘、脳腸相関【Braak仮説:タンパク質α-シヌクレイン】

お知らせ

※ブログの後半に小腸・大腸のイラストが出てきます。

はじめに パーキンソン病には便秘の方が多い

「排便が1日に1回未満の方は、1日に2回以上の便通がある方と比較してパーキンソン病を発症する確率が4.1倍高い」というデータがあるように、パーキンソン病の方には便秘の方が多いです。(実際に、私がリハビリやオステオパシーの施術で関わってきたパーキンソン病のほとんどの方は、腹部の組織が硬く、便秘を伴っていました。)
発生学的に、まず腸菅が作られ、それを元にして脳が作られるという順番で人間の体は作られていくので、腸と脳は元々つながりを持っていますし、近年着目されている「脳腸相関(のうちょうそうかん)」の観点からみても、パーキンソン病と腸内環境に関連性がある事が科学的に解明されてきています。

発生学とは・・・たった一つの細胞である卵子が精子と受精し、人間としての形を作り上げていくことを追った学問。解剖学や生理学の大元になる。

 「腸脳相関」とは? 第二の脳(セカンドブレイン)と呼ばれる腸

腸が持つ神経細胞の数は、人体の中で脳の次に多く、おおよそ一億個にものぼると言われています。また、筋肉やその他の内蔵が脳からの指令がなければ動く事が出来ないのに対して、腸は脳からの指令に関係なく、独立して活動することが可能です。ここに、小腸が「第二の脳(セカンドブレイン)」と言われる所以があります。
また腸は、脳からの指令に関係なく単独で働くだけではなく、迷走神経や内分泌系(ホルモン)を通して、腸と脳はお互いに連絡を取り合うことをしています。例えば、脳にストレスがかかると胃腸の調子が悪くなり、胃腸の調子が悪いと気分が沈んでしまう。といったように、脳と腸がお互いに情報を与え、影響を及ぼし合うことを『脳腸相関(のうちょうそうかん)』と言います。

パーキンソン病と腸脳相関

パーキンソン病の発病機序

パーキンソン病は、発病の原因が分からないために、治療法・予防法が確立していない難病の一つです。現段階では『α-シヌクレイン』というタンパク質が過剰に脳に蓄積し、それにより中脳にある「黒質」と言われる脳の一部の細胞の数が減り、ドーパミン(神経の情報を伝達する物質)の量が減ることが原因で発症すると考えられてます。タンパク質『α-シヌクレイン』が、パーキンソン病の鍵を握っているとされ、長年の研究対象とされていました。

【Braak仮説】α-シヌクレインは腸で作られる

今まで、脳の中で作られると考えられてきたα-シヌクレインは、実は脳ではなく、腸管(小腸や大腸)で作られているという可能性が示されてきました。
【Braak仮説】は、腸管で作られたα-シヌクレインが、腸管にある自律神経から、迷走神経(内臓を支配する神経)を通って、中脳の黒質まで到達し蓄積するという説です。私がこの説を知った時点では、まだ仮説の段階でしたが、パーキンソン病の方を対象とした臨床研究が進み、少しずつ証拠が出始めています。現に、パーキンソン病の方の腸管の神経叢には高い頻度でα-シヌクレインが存在しているそうです。
パーキンソン病だけではなく、レビー小体認知症や多系統萎縮症の発症にも、α-シヌクレインの蓄積が関わっていると言われています。Braak仮説の今後の展望に期待です。

腸の状態を良好に保つには?

以上の事から、パーキンソン病の改善や予防のためには、腸の状態を良好に保つことが一つ重要な要素である思います。腸は食物を消化・吸収するだけではなく、実は様々な機能を持っています。ホルモンを分泌し、外部からの侵入を防ぐバリア機能や免疫の機能を持ち、約100兆個の腸内細菌(腸内フローラ)を有しています。多機能な事はその反面で、様々な事柄に影響を受ける事を意味します。腸の状態を良好に保つためには、食事面、精神的なストレス、リーキーガット、アレルギー、抗生物質による腸内細菌への影響などなど、生活場面で考慮する点が多くありますが、解剖学とオステオパシーの考えを元に腸の状態を考える事も興味深いと思います。

腸はなぜ蛇行しているのか?

日本人の大腸の長さは約1.5メートル、小腸に関しては、約6〜7メートルの長さがあります。イラストのように腸が蛇行し、幾重にも幾重にも折れ曲がっているのは、腹部の狭い空間に長さのある腸を収納するための体の作りの工夫です。この工夫のために、腸の折れ曲がっている所や重なり合う所では、筋膜の癒着や緊張が起こりやすく、自由な動きを失った腸は、正常な機能を発揮する事ができません。幾重にも折れ曲がりながら重なる中にも、滑り合う事が必要です。

腹部の組織が硬いパーキンソン病の方には、オステオパシーの施術の補助として、呼吸法(腹式呼吸)を伝えています。深い腹式呼吸は、小腸を含めた内臓周囲の筋膜の緊張を解き、腸の働きを高める効果が期待できます。

【関連記事】

この記事を書いた施術者

 

関屋オステオパシー 代表 
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
案内動画はこちら

おすすめ記事一覧

オステオパシーの考え方

「オステパシーの考え方」
「オステオパシーの施術方法」
「症状別オステオパシーの記事」

健康観

「映画の所感」
「エドガー・ケイシー」

 

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


施術者紹介

関屋淳

2011年より、理学療法士として総合病院に5年間勤務。その後、5年間訪問看護ステーションに勤務し、延べ10000回以上のリハビリを実施しています。その間、オステオパシーの施術を2000回以上実施しています。

『自分と患者さん両方の体と心を豊かに。そして、その豊かさが周囲の人たちに拡がっていくように』そのような施術を目指しています。

⇒ 詳しいプロフィールはこちら

おすすめ記事

特集記事