オステオパシー

腎臓が関わる様々な痛み【骨盤痛・膝痛・腰痛など / オステオパシー腎臓治療 / 腎臓によっておこりうる症状 / 働きと解剖学から考えるケア方法】 

お知らせ

はじめに

肝臓と共に「沈黙の臓器」として知られている腎臓。現代の生活様式は腎臓への負担が大きく、20歳以上の成人の8人に1人は慢性的に腎臓の働きが低下している「慢性腎臓病(CKD)」の状態であると言われています。

オステオパシーと解剖学の観点から考えた時に腎臓は、主たる働きである毒素の排出や水分量の調節だけでなく、消化や生殖にも深い関りがあると考えられ(後述してます)、多くの働きを持つがために負担がかかりやすい内臓であると言えます。
また様々な神経との位置関係から、腎臓に負担がかかっていることで遠く離れた部位にも痛み(神経痛)が起こることがあり、膝、腰、股関節、骨盤の近くに痛みがある場合、オステオパシーの手技で腎臓にアプローチすることで痛みが緩和・消失することが臨床中でも度々見られています。腎臓が下垂(下記に記載)している場合は、筋膜を引っ張り首の痛みや肩こりを起こすこともあります。

今回の記事では、腎臓と痛みの関係、腎臓に負担がかかる事で起こりうる症状、腎臓の役割とケアの方法についてまとめてみました。

腎臓が関わる様々な痛み【腰痛・骨盤痛・膝痛・股関節痛】

腎臓の病気では、腰痛や背中に痛みが起こるが知られています。解剖学で考えると、腎臓の周りにはとても多くの神経が張り巡らされ、腎臓の下垂(位置が下に下がる)や癒着(周りの組織とくっつく)が起こると、周囲の神経が圧迫され、腰痛だけではなく様々な部位に起こる痛みの要因になり得ます。以下は腎臓によって圧迫が起こる神経の一例です。

  • 閉鎖神経
  • 大腿神経、外側大腿皮神経
  • 陰部大腿神経
  • 腸骨鼠径神経、腸骨下腹神経
  • 肋下神経(第12肋間神経)


腎臓によってこれらの神経が圧迫がされると、例えば膝や股関節・太ももの痛み、仙腸関節痛(骨盤の痛み)、下腹部や鼠径部、陰部(排尿時の痛み)にも痛みが起こる可能性があります。

臨床例

以前、「膝の痛みで正座が出来ない」と仰っているクライアントの方がいました。その方は腎臓とその後ろの筋膜が癒着していた(くっついていた)ことが原因となって膝の痛みが起こっていたので、オステオパシーの手技でその癒着を解消することで痛みなく正座することが出来きるようになりました。オステオパシーの診方では腎臓に問題が起きていましたが、その方は腎臓の病気があるわけではなく、血液検査でも腎臓に関わる数値に異常はありませんでした。西洋医学の検査で異常が見つからなくても、オステオパシーの視点では腎臓に負担がかかっていて膝の痛みなど様々な部位に痛みが起こる場合があります。

腎臓が下垂と癒着を起こす原因 

腎臓の下垂 = 位置が下に下がること
癒着 = 周りの組織とくっつくこと

多くの内臓と違い、腎臓には靭帯(じんたい)のような強靭に固定してくれる支えはなく、筋膜と脂肪に包まれその位置を保っています。そのために動きやすく、その位置は不安定で、主に下に下がりやすいです(腎下垂)。腎臓の下垂と周りの組織との癒着が起こるとされる原因は以下になります。

妊娠

妊娠によって子宮が大きくなっていくと周りにある臓器は形や位置を変えて対応しますが、腎臓は後ろに押され後方の筋膜に癒着することがあります。出産後も腎臓が癒着したままの状態であることもしばしばあり、妊娠・出産を経験された方で腰痛や骨盤近くに痛みがある場合、腎臓と周りの筋膜の癒着を1つの要因として考える必要があります。

転倒や身体的なトラウマ

腎臓は横隔膜の真下に位置しているため、呼吸の影響を強く受けています。例えば交通事故で体に衝撃があり一瞬呼吸が止まる。そのことが起因して腎臓が癒着を起こし、その位置で固定されてしまうことがあります。腎臓は身体的なトラウマと関わりが深い内臓ですが、転倒した時に尾骨や腰を強く打った場合には特に腎筋膜(ゲロタ筋膜)が周囲に強く癒着されると考えられています。

悪い姿勢

悪い姿勢(精神的に落ち込んだ時にみられる)は、内臓を下垂させる大きな要因です。不良姿勢で肋骨が下に下がると、横隔膜の下にある内臓(肝臓、胃、腎臓)は圧迫を受けますが、特に右の腎臓は約1kg~1,5kgの重さがある肝臓が覆いかぶさるような位置関係にあるので腎下垂が起こりやすいです。(肝臓との位置関係から、元々左腎に比べて右腎の方が低い位置にあります。)

腎臓に負担がかかる事で起こりうる痛み以外の症状

腎臓に負担がかかっている状態では、痛み以外にも様々な症状が現れる可能性があります。

  • 脚や顔のむくみ
    腎臓の水分調節が上手く働かなければ、からだに水が貯まる。ひふを押すと跡が残る。まぶたが腫れる。など
  • 低血圧や貧血
    腎臓のホルモン(レニン・エリスロポエチン)が正常に作られないために起こる。そのために光が眩しく感じることがある。顔が青白い。
  • 目が充血する
  • 強い疲労感
    腎臓以外でも膵臓や肝臓が疲弊していても大きな疲労が起こる。寝ても疲れが取れない。
  • 尿量の減少や増量
  • 起床時におこる症状
    早朝の腰痛、脚のしびれ、喉の渇き など
  • 冷え性。寒さに過敏になる。

右腎と左腎の違い~血液・リンパ循環から~

解剖学的に右の腎臓と左の腎臓の血液(静脈)・リンパ循環をみてみると、大きな違いがあります。左の腎臓は主に生殖器系と同じ循環の回路を分かち合い、右の腎臓は消化器系と血液・リンパの流れを共有しています。また右腎と肝臓の位置関係から、右腎は肝臓で解毒した老廃物の出口としての働きが強い。そのために、右の腎臓の健康を考えた時には消化器系を、左の腎臓のためには生殖器系の状態も含めて考えていく必要があります。

腎臓の役割とケアの方法

腎臓は体内環境を一定に保つために様々な「微調節」をする臓器です。主な役割として「全身の血液をろ過して、尿とともに老廃物を排出する(解毒する)」ことが知られていますが、それ以外にも「酸とアルカリのバランスを取る」「ホルモンの分泌(レニン、エリスロポエチン)」「ビタミンDを活性化し、骨を強化する」など多くの働きを担っています。

腎臓の役割と解剖学の観点から、私見も含めて腎臓に負担をかけないケア方法を考えてみました。(記事をまとめている中で腎臓のケアには総合的な視点が必要であるように感じました。過去に書いた記事も参考にして頂くとより良いと思いましたので、リンクを多く載せています)

※腎臓は様々な面で調節をしている臓器であるため、状態によってケアの方向が異なる場合があります。例えば水分量に関して、基本的には水分不足で腎臓に負担がかかると言われていますが、腎機能が落ちている方が余分に水分を摂ると、心臓や肺に負担がかかることがあります。腎臓病をお持ちの方は医療機関での生活指導を踏まえた上で、この記事の内容を参考にして頂けたらと思います。

腎臓のケア①タンパク質を摂りすぎない

腎臓は、食事で取り入れたタンパク質を体が使えるように代謝した際に産まれた老廃物(尿素、クレアチニン)を尿として排泄しています。

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関屋

「代謝」とは、食事から摂った栄養(タンパク質や脂肪など)を体が使える形に変える働きの事を言います。

そのため、タンパク質を摂りすぎると尿素とクレアチニンの量が多くなり、腎臓が過剰に働くことを余儀なくされます。タンパク質は体を動かすために必要なエネルギー源ですが、腎臓に負担をかけないためにはタンパク質の適度な摂取を心がけ、特に乳製品、肉類、魚介類などの動物性タンパク質の摂りすぎには注意が必要です。

腎臓のケア②体をアルカリ性にする食事

人のからだは、細胞が正常に働く事ができるよう弱アルカリ性に保たれています(専門的に言うとpH7.35~7.45という数値)しかし心理的ストレスや化学物質の摂取、食事の内容により、からだは酸性に傾きやすく、腎臓が酸とアルカリのバランスを取る働きを担っています。エドガー・ケイシー療法では、からだの細胞をアルカリ性にする食事(アルカリ性食品)が推奨され、この食事療法を実践すると腎臓の負担が軽減すると考えられます。
からだの細胞をアルカリ性にする食事についてはこちらで記事にしています。

腎臓のケア③深い呼吸

腎臓の位置は横隔膜の真下。呼吸で横隔膜が上下に動いたとき、腎臓も一緒に2〜3センチの動きがあります。腹部にある内臓、特に横隔膜の真下にある肝臓、胃、腎臓は、横隔膜が上下に動くたびに周囲の組織を含めてストレッチやマッサージを受け柔軟性を維持していると考えられ、横隔膜が大きく上下に動く深い呼吸には、腎臓の柔軟性を維持し働きを助ける意味あります。また呼吸は不要な物質を体外に出す解毒の一端を担っているので、深い呼吸ができることは、解毒の臓器である腎臓の負担を減らすことにつながります。

今までに呼吸法やエクササイズに関する記事をいくつか書いています。興味のある方はぜひ読んでみて下さい。

腎臓のケア方法④リンとナトリウムの摂りすぎに注意

腎臓では体内のミネラル調節も行っています。必要なミネラルの吸収を促し、過剰な量のミネラルが体に残っていれば尿として排出します。ミネラルは食事から摂取されるため、栄養バランスの取れた食事を心がけることは腎臓の状態を良好に保つために大切です。また現代は加工食品が多く飽食に傾きやすいため、特にリンとナトリウムを余分に摂取しやすいと言われています。

ナトリウム
腎臓の食事療法ではまず「減塩」と考えられるほど食塩(塩化ナトリウム)の摂りすぎは腎臓へ負担が大きいです。また食塩には加工度の高い「精製塩」と、より自然な製法で作られた「自然塩」があり、精製塩では塩化ナトリウムの成分量が多いと言われています(そのために塩辛い)。減塩すると共に、塩にこだわる事も腎臓のケアにつながると考えられます。

塩についてはこちらで記事にしています。

リン
リンは食品添加物として使用されているため、ほとんどの加工食品(インスタント食品、ハム・ソーセージなど肉や魚の加工品、ファーストフード、スナック菓子菓子類など)にはリンが多量に含まれています。そのため、加工度の低い食品や生鮮食品を選ぶことで腎臓の負担を軽減することになります。

腎臓のケア方法⑤アルコールとの付き合い方

少量のアルコールは利尿を促しますが、大量の飲酒は腎臓に負担をかけます。大阪大学の研究では、1日あたり「純アルコール換算で60g(ビールロング缶3本、日本酒3合に相当)以上」の大量飲酒は、男性の腎機能低下のリスク因子となることが明らかになりました。また女性ではアルコール分解速度が男性と比べて遅いために、より大量飲酒による腎臓への影響が大きいと言われています。

腎臓のケア方法⑥適度なコーヒーの摂取

コーヒーのポリフェノールとカフェインには抗酸化物質が豊富に含まれているため、上記の体の細胞をアルカリ性にする食事と同じように、酸とアルカリのバランスを取る腎臓の働きを助けます。(カフェインには利尿作用もあり)
しかしカフェインによって頭痛や不眠が起こる場合もあり、コーヒーとの相性は個人差が大きいと思っています。エドガー・ケイシーのリーディングを参考にして、コーヒーの飲み方や食べ合わせについて記事にしています。コーヒーをよく飲む方はぜひ目を通してみて下さい。

腎臓と感情・心理について

上記の右腎=肝臓・消化器系、左腎=生殖器系との関連が強いことを、内臓と感情・心理との関係の中で考えることはとても興味深いです。オステオパシーでは肝臓=「怒り」の感情と関連が深いと考え、日常的な怒りのストレスパターンを持っているなら遅かれ早かれ肝臓は疲弊し、これは右の腎臓にも同じことが言えます。左腎は生殖器、つまり生存に関わる「恐怖」と関係しています。事故や怪我によって命を落とす危機を感じた時や、幼少期に親に見捨てられると感じる経験があるなら、左腎は反応し障害を受けると考えられています。
また腎臓は深部に蓄えられたエネルギーの貯蔵庫でもあるため、腎臓の調子が悪ければ強い疲労とともに悲観的になることがあります。

オステオパシーにおける腎臓の治療

腎臓の働きと解剖学、エドガーケイシー療法など自然療法の観点から腎臓のケアについて考えてみました。腎臓には多くの働きがあり、右腎が消化器と、左腎が生殖器との関連が深いため、より総合的な視点が必要であると思います。

オステオパシーでは腎臓に関して「正しい位置にあることで、最大限の働きを発揮することができる」と考えています。多くの場合、腎臓の位置は下に下がる(下垂と言います)、もしくは周りの筋膜と癒着(くっついいている)し、正しく機能することが出来なくなっているので、優しく腎臓に触れ、周りの筋膜とバランスの取れた正しい位置に腎臓を戻すよう穏やかに調整していきます。

腎臓への施術以外にも、姿勢や呼吸の状態が腎臓に影響を与えるので胸郭(主に肋骨)の柔軟性や横隔膜の動きの確認と背骨へのアプローチ。また必要に応じて消化器系と生殖器系など腹部にある内臓の状態も触診によって診ていくことをしていきます。

腎臓と肝臓の関係

「肝心(腎)要」という言葉の通り、肝臓・心臓・腎臓は古くから重要な働きを担う中心的な内臓であると考えられてきました。特に毒素の排出には腎臓と肝臓は密接に関わり合うため、腎臓の健康のためには一緒に肝臓の状態を良好に保つことが大切であると考えられます。肝臓や心臓のケア方法に関しての記事も書いていますので、ぜひご参考になさって下さい。

この記事を書いた施術者

 

関屋オステオパシー 代表 
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
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施術者紹介

関屋淳

2011年より、理学療法士として総合病院に5年間勤務。その後、5年間訪問看護ステーションに勤務し、延べ10000回以上のリハビリを実施しています。その間、オステオパシーの施術を2000回以上実施しています。

『自分と患者さん両方の体と心を豊かに。そして、その豊かさが周囲の人たちに拡がっていくように』そのような施術を目指しています。

⇒ 詳しいプロフィールはこちら

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