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目次
はじめに
『パーキンソン病』という病名を聞いた事がある方は、少なくないと思います。原因が分からないために治療方法が確立していない難病の方の中でも、パーキンソン病を患う方は多く、厚生労働省の調べでは、60歳以上では10万人に約1,000人がパーキンソン病を発症すると言われています。
パーキンソン病の治療法としては、服薬での管理とリハビリテーションが中心で、治療法としてオステオパシーを含めて代替医療を選択される方は、多くないのが現状です。
現在、パーキンソン病の診断を受けている方で、継続してオステオパシーの施術を受けて下さっている方がいます。経過を追う中で、オステオパシーに貢献出来る事も多いのではないかと可能性を感じているので、オステオパシーの施術を検討されている方や、代替医療の施術者の方の参考になれば思い、施術の経過を残しておきたいと思います。
*掲載にあたって、ご本人の承諾を得ています。
難病 パーキンソン病とは?パーキンソン病の一般的な症状
パーキンソン病は、中脳にある「黒質」と言われる脳の一部の細胞の数が減り、ドーパミン(神経の情報を伝達する物質)の量が減ることで発症すると言われていますが、どうしてパーキンソン病になるのか。直接の原因は分かっていません。
発症年齢は50~65歳に多く、その後少しずつ症状が進行する進行性の病気です。
パーキンソン病では、脳内のドーパミンの量が減ることで、様々な症状が体に現れます。
パーキンソン病の4大症状
パーキンソン病で現れる、4つの大きな症状です。
- 手足が震える
専門用語では振戦(しんせん)と言います。座って動いていない時に、手や足が小刻みに震えます。パーキンソン病の代表的な症状です。 - 筋肉が硬くなる
筋固縮(きんこしゅく)と言います。無意識に力を抜くといった筋肉のコントロールが出来なくなり、筋肉がこわばり、身体がスムーズに動かなくなります。 - 動きが鈍くなる
無動(むどう)と言います。筋固縮の結果、体をスムーズに動かすことが難しくなるので、動きのスピードがゆっくりで、また全身的に動きの範囲が小さくなります。(例えば、歩幅が小さくなる。書く字の大きさが小さくなる。) - バランスがとりにくくなる
姿勢反射障害(しせいはんしゃしょうがい)と言います。立っている時や歩いている時、本来なら無意識に重心の位置をコントロールして、バランスを取っていますが、パーキンソン病の方は、このコントロールが難しくなり、転びやすくなります。転ぶ事への恐怖感が、上記の筋固縮や無動を助長させ、症状を進行させる一因になる事が多いです。
また歩き方として、前かがみの姿勢になりやすく、首が下がった姿勢や体が片方に傾く姿勢をされている方もいます。
その他の症状
4つの大きな症状の他にも、自律神経の症状としての便秘、起立性低血圧(立ちくらみなど)、排尿のトラブルや、認知面の低下、精神的な症状(うつ)など様々な症状が見られることがあります。
施術を受けている方の症状
*初診時の情報
【年齢】80代 【性別】女性
【病名】パーキンソン病、2型糖尿病
- 少しずつパーキンソン病の進行を感じている。
- 腰が痛い。(立っている時、お皿洗いしているとき)
- 疲れやすい。元気な時は元気だけど、調子に波がある。
- 歩いている時にふらつく、転びそうで怖い。
- 左膝と足首が痛くて、長くしゃがむことが出来ない。
- 立ち上がるのに時間がかかる。
【客観的な状態】
- 立っている姿勢が前かがみになっている。(腰痛と関係があると思われる)
- 歩き出しの一歩目が出ずらい(すくみ足:パーキンソン病によくみられる症状の一つ)
- 立っている時、重心が左によった姿勢になっている。
- 片足立ちが出来ない。
オステオパシーによる施術と経過
*2週間に1度の頻度で、現在7回の施術を行っています。
パーキンソン病の症状の一つとして、筋肉が硬くなることがありますが(固縮)、体に触れて診てみると、硬いのは筋肉だけではなく、背骨の関節、内臓周囲の筋膜、硬膜(脳や神経系を包む膜)など、全身的に組織に硬さがあり、内臓や神経、筋肉、体液の循環などの正常な働きが止まってしまっているように感じられました。また、骨盤の動きが乏しく、骨盤と頭蓋骨の連動した動きが少ないので、脚への筋膜の流れが途切れてしまっていました。
施術としては、特に頭蓋骨に着く硬膜の歪みと固さを取り除き、脳脊髄液の流れを改善することで、全身の神経系が正常に働けるようすることに主眼を置いて行っています。また、整えた骨盤の状態が元に戻りやすく、毎回の施術で、骨盤の関節や骨盤内の筋膜を調整することが必要になっています。(後にご本人に伺った所、40代に子宮筋腫になり、子宮を全摘しているとのことでした。この事が原因で、骨盤の動きが乏しくなり、頭蓋骨や脳にも影響していると思われます)
- 3回目の施術を終えた時点で「左膝と足首が痛くて、長くしゃがむことが出来ない」との訴えははくなり、しゃがんでお話されていました。また内臓周囲の筋膜の硬さ取れて腹部が柔らかくなってきているように感じました。
- 5回目にお会いした時に「まだ、調子に波はあるけど、調子が良い時が増えた」とおっしゃっていました。食欲が出てきたようで、少し体重が増えたとのこと(上記に内臓の状態と関連していると思います)
- 7回目の施術では「調子が悪い時でも(腰が痛い時でも)、大丈夫と思える。前は調子が悪い時には横になって休んでいたけれど、それがなくなった。精神的に楽になっている」とおっしゃっていました。
体に触れて診た時に、硬膜の歪みや硬さが大分少なくなっていました。「精神的に楽になっている」とおっしゃっていた事が印象的でした。硬膜は脳を覆っているので、硬膜に硬さがあれば脳を圧迫し、精神面に影響していたであろう事に、体に触れて診る中で、ふと気づきました。また、この時に立ち上がりがスムーズに行えるようなったともおっしゃっていました。
オステオパシーでは、頭蓋骨の中にある脳自体に働きかける技術があります(脳に働きかけるといっても、力をかけて触れていくわけではなく、意識で診ていくような感覚なので、柔らかく触れています)
脳も一つの塊ではなく、大きく分けても大脳、脳幹、小脳、大脳基底核、大脳辺縁系などに分かれ、それぞれが硬膜に包まれ情報を交換し合っています。この方の場合は、特に小脳や大脳基底核、視床周囲の筋膜に歪みや硬さがあるように感じられ、症状として表れている前かがみ姿勢などの運動機能に大きく関わっている可能性があります。
おわりに
年齢も80代と高齢の方だったこともあり、オステオパシーの施術に効果が出るのか、私自身も確信が持てない状態で施術を始めましたが、少しずつ身体や症状に変化が表れてきています。(2週間に1度の頻度で、大きな間隔を空けずに施術を受けて頂いている事が良かったと思っています)
施術を通して感じていることですが、オステオパシーによる体の診方をしても、パーキンソン病の方の体は、やはり脳の状態に強く影響を受けています。病状の進行を遅らせ、症状を改善するためには『脳へ良い刺激を与える』ことが一つ、重要な指針だと考えています。オステオパシーによる手技は『脳へ良い刺激を与える』ための方法の一つなので、医師から処方されている薬は必ず飲み、運動量を確保するためのリハビリテーションも続けるように伝いています。
それ以外にも十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な水分量を取ることは、脳の機能を考えた時にとても大切で、身体だけではなく、生活場面での改善も合わせて行う必要性を感じました。
オステオパシーの施術で、パーキンソン病の方の症状や姿勢、運動機能がどこまで回復するのかは分かりませんが、今後も施術を継続し、経過を追いたいと思います。
*オステオパシーの施術の効果には、個人差があります。
この記事を書いた施術者
関屋オステオパシー 代表
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
案内動画はこちら
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