健康観

解剖学・生理学的な特性を利用して骨を強くする【ウォルフの法則】【リモデリング】

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はじめに

運動法、呼吸法、食事などに関する様々な健康法が考案され、その情報を手軽に知る事ができる時代です。そのような時代だからこそ、人間の体の基本となる解剖学・生理学の観点を踏まえて「健康」を考える事も合わせて大切だと考えています。今回は「骨」が持っている役割や特性についての記事です。

「骨」に持つイメージ 生命への畏怖

小学校や中学の理科室に置いてある骨格模型を見た時「不気味さ」「怖さ」を感じた方は多いと思います。反対に生命の神秘的な力を感じた方もいると思います。
骨は人間の体の奥深い所に位置しているので、人が生きている間に、その存在を直に目にする事はできませんが、死後に骨だけは遺骨として残り続けます。そのため「骨」は、人間の生と死を想起させる存在です。生命活動を終えてもなお、形として残り続ける骨を見た時、敬意や畏怖の念が生まれる事は自然な事なのかもしれません。

「骨」の役割

人間の体の中には、形状や大きさが違う206個もの骨が存在しています。(骨化が終わっていない乳児には、300本以上の骨があると言われています。)
解剖学・生理学的な観点から考えると、「骨」は多く役割や特性を持ち、体が生命活動を営む事を多面的に支えています。

身体を支持する骨格として役割

「骨」の大きな役割の一つは、人間の体に常にかかっている重力に対して姿勢を保つ、体を支えるという骨格として役割です。この働きは筋膜など軟部組織と共に行われています。例えば、人間の腹部には柔らかさのある内臓や脂肪が集中していますが、それらだけでは重力に抗うことがは出来ません。背骨が支柱となり、背骨に連なる筋膜が内臓や脂肪を吊り下げ、固定するように支持することで、身体を支えています。

血液を造る骨髄

身体の奥深くを意味する「骨の髄まで」という言葉があるように、骨髄は骨の中心部の空間にある柔らかさを持った組織で、血液の主成分である赤血球や白血球、血小板が造られる「造血の場」です。毎秒200万個の血液の細胞が造られていると言われています。
新生児では、全身の骨髄で血液が造られていますが、成人になると背骨、胸骨(胸の中央の骨)、腸骨(骨盤の骨)など限られた体幹の骨の中で造血が行われます。

重要な器官を保護する役割

体に指令を出す神経系の中心である脳・脊髄は頭蓋骨や背骨の中に収納され、肺や心臓、肝臓など生命に関わる臓器は胸郭(主に肋骨で囲われた空間)に位置します。また子宮など生殖器も骨盤の中にあるように、人間の体の中でも特に重要と思われる器官は固さのある骨の中に収納され、衝撃から守られるように配置されています。

カルシウムやリンを蓄える貯蔵庫として役割

骨はカルシウムやリン、カリウム等の電解質(イオン)を貯蔵し、必要に応じて血液中に放出しています。カルシウム=骨を作る。というイメージがあると思いますが、血液で運ばれたカルシウムは、心臓の働きを促す、筋肉の興奮を抑える、血液が固まる事を促して出血を予防するなどの働きを持ち、体の多くの器官が正常に働くためにはカルシウムが必要になります。

「骨」が持つ特性 

「リモデリング」骨は形成と破壊を繰り返している

トレーニングによって筋肉量が増える事や皮膚におけるターンオーバーと同じように、骨の細胞にも新陳代謝があります。骨は骨芽細胞(骨を作る)と破骨細胞(骨を壊す)という細胞を持っていて、周期的に破壊と形成を繰り返しています。これを「リモデリング」と呼びます。リモデリングは約3月かけて行われ、1年間で約20%の古い骨が新しい組織に入れ代わると言われています。
骨のリモデリングは生涯を通じて行われています。新陳代謝が盛んな小児だけではなく成人においても、骨の状態は変化していきますし、意識的に変化を与える事もできます。

「Wolff(ウォルフ)の法則」骨は外からの力により変化する

骨の性質に関して、100年以上も前に提唱されている法則があります。

骨には、加えられた機械的刺激に適合するように形態を変化させる生理学的な機能がある

Wolff

骨は加えられた力、負荷に適応して、構造(形や強度)を変化させます。つまり「力かかると骨は強くなり、力がかからなければ骨は弱くなる」という性質を持っています。例えば、重力がかからない宇宙空間では、骨量が著しく低下する事が知られています。反対にジャンプ動作が多いバレーボールやバスケットボールの選手は負荷が強くかかる脚の骨の骨量が高く、テニスプレーヤーは利き手の骨量が非利き手に比べて高いそうです。高齢者の方でも「若い時に良く歩いた」という方は下肢(脚)や骨盤の骨格の密度が高い印象を受けます。

運動は『骨』を強くする

「骨」が持つ役割や特性を知ると、改めて運動する事の重要性を感じられると思います。特に骨密度を高める事において、適度な運動は重要な要素の一つになります。骨の特性上、骨密度は一朝一夕では増加しません。(骨のリモデリングには一定の期間がかかります)骨密度を高めるためには、短くても3ヶ月以上の継続した運動が必要になるので、長い目で見て続けられる自分に合った運動方法を選択する事が大切だと思います。

骨粗鬆症の方におすすめる運動【四つ這い・ハイハイ】

骨粗鬆症など骨密度が低下している方は、転倒などわずかな外力でも骨折する危険性が高く、以下の4か所は特に骨折が好発する部位です。

  • 胸部や腰部の背骨(脊椎)
  • 太ももの付け根(大腿骨近位部)
  • 手首(橈骨遠位部)
  • 腕の付け根(上腕骨近位部)


赤ちゃんが発達の中で獲得していく四つ這い・ハイハイですが、実はリハビリテーションの中で取る事の多い姿勢の一つです。四つ這いの姿勢は「太ももの付け根」「手首」「腕の付け根」に同時に荷重がかかり、また『ハイハイは、背骨を整える』と言われるように、普段とる姿勢・動きでは使わない背骨周りの筋肉を使うので、骨折が起こりやすい部位の骨密度を効率的に高める事が期待できます。ウォーキングなどの基本的な運動に加えて、ぜひ行ってみて下さい。

この記事を書いた施術者

 

関屋オステオパシー 代表 
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
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施術者紹介

関屋淳

2011年より、理学療法士として総合病院に5年間勤務。その後、5年間訪問看護ステーションに勤務し、延べ10000回以上のリハビリを実施しています。その間、オステオパシーの施術を2000回以上実施しています。

『自分と患者さん両方の体と心を豊かに。そして、その豊かさが周囲の人たちに拡がっていくように』そのような施術を目指しています。

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