健康観

解剖学・発生学で考える鎖骨~手・頭蓋骨との関係性~

お知らせ

はじめに

鎖骨は、胸骨(胸の中心にある骨)や肩甲骨との関節を作り、体の幹である体幹と腕を繋ぐ、まさに鎖(くさり)のような働きをしています。また「鎖骨美人」という言葉があるように、美しさの象徴としても捉えられる鎖骨ですが、解剖学や発生学的に見てみると鎖骨はとてもユニークで興味深い骨です。

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関屋

発生学とは、もともとは一つであった細胞が人間としての形を作り上げていく過程を追った学問です。

解剖学、発生学で考える鎖骨

手を使うためには鎖骨が必要?

四足動物には鎖骨がない

哺乳類の骨格は、骨の数や作りに大きな違いはないと言われていますが、鎖骨に関しては四足動物なのか、それとも二足歩行をする要素がある動物なのかで鎖骨の有無に違いがあります。

 

  • 鎖骨がある
    人間、オラウータン、サル、ネズミ、鳥類など

  • 鎖骨がない
    四足動物(犬、猫、馬、チーターなど)

進化の過程には様々な意見があるようですが、一説として、二足歩行に移行し手を使うようになったために鎖骨が発達し、反対に四足動物では鎖骨が不要になり、退化したと考えられています。

胸部と上肢(腕)との関節を作る

肩関節は、肩甲骨と腕の骨である上腕骨をつないでいる関節です。そのため、胸部と上肢を関節するのは肩甲骨であると思う方は多いかもしれませんが、実は肩甲骨は、前鋸筋(ぜんきょきん)や菱形筋(りょうけいきん)などの筋肉で胸郭につながるだけで、骨性のつながりである関節を胸部との間に持っていません。肩甲骨は肋骨の上で浮遊している状態になっています。(肩甲骨にはそれだけ自由な動きが必要になります)
そして、胸部と上肢を骨性につないでいるのは鎖骨です。鎖骨は、上肢を胸郭に骨性につなぎ止め、肩を自由に働かしたり、手の細かい作業を行ったりする時の安定性を与えています。

頭蓋骨と鎖骨の関係

膜性骨化と軟骨性骨化

少し難しい話ですが骨化(人間の骨の作られ方)について。

骨化とは、発生過程において骨組織が作られることを示す。正常な骨化は膜内骨化および軟骨内骨化に分類される。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

骨化には2種類あります。一つは「軟骨内骨化」。骨が作られる前に軟骨の雛形ができて、その後に骨に変わっていきます。もう一つは「膜内骨化」といって、軟骨の段階を経ずに直接骨が作られていきます。ほぼ全ての骨格(例えば脊骨や大腿骨)は軟骨内骨化により骨が作られていきますが、ただ二つ鎖骨と頭蓋骨だけは膜内骨化です。
手を使うために発達した鎖骨と、手を用いて道具を作り、それを使いこなす為に大きく発達した脳・頭蓋骨が同じ骨化の経過を辿る事は、興味深いです。

オステオパシーの触診を使って実験してみました

オステオパシーの触診では、脳や脊髄を覆う硬膜にみられる脳脊髄液のリズム(CRI、クラニアル・リズミック・インパルス)やタイドを感じ取るという事をします。実験的に、鎖骨を圧迫した状態でクラニアル・リズミック・インパルスを触診してみると、リズムが停止する事が確認できます(体の様々な部位を圧迫し、リズムを触診してみましたが、弱くなったり、歪みが作られる事があっても、リズムが停止するのは鎖骨だけでした。)骨化した後も、鎖骨と頭蓋骨には一定の関係性が続いていると考えられます。

※あくまでも私の触診感覚での話です。より優れた感覚を持っている方からは違う意見があると思います。

CRIやタイドに関しては、こちらの記事にも書いています。

骨折しやすい

鎖骨の骨折は多く、全ての骨折の中でも約10%を占めています。外傷で直接鎖骨に衝撃が加わったり、転倒した時に手をついたり、肩を下にして転ぶ事で鎖骨骨折が起こります。

なぜ骨折しやすいのか

鎖骨が骨折しやすい原因を考えた時、鎖骨がある位置や形状も関係していると思われますが、鎖骨の骨化していく経過も大きく関わっているのではないかと思います。体の中のほとんどの骨は15歳~18歳ぐらいまでに骨化が完了しますが、鎖骨は最初に骨化を始め(受精後30日)、そして大人になって最後に骨化を終える骨です(25歳)。骨化を終えるまでの期間が長いという事は、何かしらの衝撃を受けた時に骨自体に歪みを生じたり、関節の位置にズレが生じたり、衝撃を逃がす事が出来なければ骨折する可能性が高い事が考えられます。実際に鎖骨の骨折は、若い世代で多いと言われているそうです。

おわりに

解剖学や発生学、人間の進化の事も踏まえて考えてみると、鎖骨という小さな骨も、人間の体にとって大きな役割を担っている事に気づきます。特に発生学の観点から観みた鎖骨ー頭蓋骨(脳)ー手の関係性は、私にとっての発見でしたので、今後、関連する文献に目を通し、記事を加筆していくかもしれません。
鎖骨は美しさの象徴になるだけではなく、体の健康においても重要な要素です。例えば、鎖骨を長い時間圧迫すると、全身の脳脊髄液の流れを止め、生命力を下げる事につながる可能性があります。自身の生活と照らし合わせて頂いて、体の事を省みる機会にして頂けたら嬉しいです。

この記事を書いた施術者

 

関屋オステオパシー 代表 
関屋 淳 (sekiya jun)
【施術実績 (累計)】
理学療法士としてリハビリを1万人以上
オステオパシーの施術を2000人以上
2児の父として子育て奮闘中
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施術者紹介

関屋淳

2011年より、理学療法士として総合病院に5年間勤務。その後、5年間訪問看護ステーションに勤務し、延べ10000回以上のリハビリを実施しています。その間、オステオパシーの施術を2000回以上実施しています。

『自分と患者さん両方の体と心を豊かに。そして、その豊かさが周囲の人たちに拡がっていくように』そのような施術を目指しています。

⇒ 詳しいプロフィールはこちら

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