アンドリュー・テイラー・スティル
(1828-1917年)

オステオパシーの起源

オステオパシー(osteopathy)とは、1847年にA.T.スティルというアメリカ人によって創始された医学体系であり、手技療法です。A・Tスティル博士は、医師でありながら当時流行していた髄膜炎により3人の子供と自分の父親を失くしました。 そして当時、手厚い医療を受けていたのにも関わらず命を落とす人がいる一方で、貧しいがために医療を受ける事ができなかった人が髄膜炎から回復していく事実を目にし、自分が行っている医学に疑問を抱きます。そして薬だけに頼るのではなく、 手技により自然治癒力(自己治癒力)を高めるオステオパシー医学の研究を始め、一つの体系として確立しました。

その大きな特徴として「身体は本来、自然治癒力を備えている」と考え、人間の身体を診ています。
自然治癒力とは人間が生まれながらにして持っている怪我や病気を治す力のことですが、身体的な外傷(交通事故や骨折)、精神的トラウマ、心理的ストレス、体質に合わない生活習慣、有害な化学物質や電磁波などが年月をかけて蓄積し、自然治癒力の許容量を超える力が心身に働いた時、病気や痛み、様々な症状が現れると考えています。
オステオパシーでは、体の全て(関節・筋肉・内臓・血管系、リンパ系など)を触診で評価し、自然治癒力を妨げている原因を見つけ出し、原因に対して手技療法を施します。
原因が取り除かれれば、あとは身体が本来持っている自己治癒力が本来の仕事を行い、症状を改善してくれます。


オステオパシーにおける4つの原則

①身体は一つのユニットである。一人の人間とは、身体、心、及び精神の単位である

人間の体は、まとまりのある一つのチームのように働いています。筋骨格系、循環器系、呼吸器系、神経系、免疫系が分かれて機能することはなく、体の全ては協力し、調和することで初めて、正常に働くことができます。
また、人間は社会との関わりの中で生きているので、身体外からの影響を多大に受けています。身体・心・精神の3つが調和が取れた状態を真の健康と捉え、オステオパシーでは身体に対してだけではなく、それに影響を与えたであろう心理的・社会的・精神的な事柄も考慮し施術していきます。

②構造と機能は相互に関係している

心身への様々なストレスは、人の身体を作っている構造(骨、関節、筋肉、内臓、靭帯、血管、神経、リンパなど)の形を変化させ、機能(体の働き=血液循環、神経ネットワーク、内臓の働き、歩行など動作、免疫系など)を乱します。
オステオパシーでは、構造または機能に働きかけ、それぞれが正常に働くように調整していきます。
また、A・Tスティル博士は「構造とは筋膜のことである」とも明言しています。オステオパシーでは筋膜を重要視して身体を診ています。

③身体は自己調節、自己治癒、健康維持能力を備えている

A.T.スティルは「人の身体の内部には健康を維持する能力がある。もしこの能力を正しく認識し、正常に保つことができれば
病気を予防することも治療することも可能である。」と述べています。
また施術者の心構えとして「それ(症状の原因)を見つけ、治したら、放っておきなさい」との言葉を残しています。『原因を治したら、それ以上の事はせず、あとは患者さんが持っている自然治癒力に任せる』自然治癒力を最優先にしたA.T.スティルの姿勢がうかがえます。

④オステオパシーの合理的な治療には以上3つの原則に基づいて行われる

オステオパシーでは上記3つの原則を踏まえて施術を行っていきます。
A.T.スティルは『オステオパシーは症状を扱うのではなく、原因を扱わなければならない。症状は、原因が調整されれば消失する』と繰り返し述べています。
オステオパシーでは身体に現れている症状だけに着眼するではなく、自然治癒力を妨げている体の部位を見つけ調整し、自然治癒力を最大限に発揮させる事で、体自らが不調を取り除くことを促していきます。病や症状を癒し治すのは患者さん自身であり、オステオパシーの施術者は治癒を促進し、サポートする立場にあります。